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書籍・雑誌

2017年10月30日 (月)

『遠い山なみの光』カズオ・イシグロ

 先日、カズオ・イシグロ氏の本を2冊購入した。書店の入口に山積みされていたのが目についたからだ。ただし、ノーベル賞受賞ということよりも、著者が長崎生まれということに興味を持ったのだった。イシグロ氏は1954年生まれで、1959年生まれの私より五歳年上。1960年に渡英したというから、短期間ではあるが同じ時期に長崎に居たわけである。しかも『遠い山なみの光』は長崎が舞台になっているという。実質的には英国人といっていいイシグロ氏であるが、同じ時代の同じ場所の空気を吸っていた作家が長崎をどのように描くのか、そりゃあ気になるというものである。同じ理由でこの書を購入した、私と同年代、あるいは上の世代の長崎人がいっぱいいることだろう。とまれ、話題の書を持って書店のレジに並ぶという多少の気恥ずかしさを味わいながら(それは悪い感じではないのだが、でもやはり少し気恥ずかしい)前述の作品と『日の名残り』を購入したのだった。
 主人公の緒方悦子の団地があったのはどこら辺りになるのだろう?住まいの近くにある川はおそらく浦上川だろうと思うが、はっきりしない。藤原さんのうどん屋が中川町だから、もしかしたら中島川の河口付近だろうか?私の読解力では判明できなかった。
 終戦後まだ間もないこの時期、日本の西の果ての長崎でも、時代に翻弄されながら、人々はそれぞれに自分の人生と格闘していたのだろう。価値観の変転にとまどう老教師、わかっていながら転落していく子持ち女、誰も信じず猫とお絵かきで精神の安定を図る少女、つつましいが幸せな生活を信じようとする若妻・・・緊張感のある会話の中に、それぞれの生き様がうまく表現されていると思う。
 謎めいた展開で物語は進んでいくが、推理小説のように最後に全てが解明されるわけではない。それを不満に思う読者もいるかもしれない。しかし、不条理な世の中はもっと謎につつまれているわけで、これはこれでいいのかもしれない。
 この小説を私は面白く読んだ。自分の生き方をなんとなく振り返ってみる気にもなった。
 あえて言えば、稲佐山にあるのはケーブルカーではなくロープウェイである。また、会話が全て標準語であるのは、リアリズムの立場からいえばおかしい。しかし、それは作品の価値を損なうものではないだろう。
 

2016年3月 9日 (水)

『旅の人、島の人』俵万智

 3.11がまたやってくる。いまだに苦しみの中にいる人もたくさんいるだろう。「皆が」、「早く」、「真の意味で」、再出発できればと、心から思う。

P_20160309_204339_2 そんな3月の上旬、思いがけず『旅の人、島の人』を読んだ。著者の俵万智さんが二十代で華々しくデビューした姿が思いだされる。賛否両論あったろうが、苔むしたような短歌というジャンルに彼女が新風を吹き込んだのは間違いない。

 この本を読んで、俵さんがシングルマザーとなって仙台に住んでいたことや、震災をうけて石垣島に移住したことを初めて知った。そして三つ年下だといことも。思ったより年齢が近く、親近感が湧いた。

 傷を癒すのには、自然や人との触れ合いが一番かもしれない。だから、なりゆきで決まったとはいえ、被災直後に石垣島への移住を決めたのは、俵さんの英断だったと思う。

 息子さんは、石垣の自然や人に触れ、すくすくと育ったらしい。今では息子さんの言動がネット上で評判のようだ。息子さんが成長していく姿に、椎名誠の『岳物語』をふと連想した。

 ベビーフェイスに反して、俵さんが意外と酒豪だということも、文章の細部から伝わってきた。泡盛などご一緒できたら楽しいだろうな。実現は不可能だろうが、飲兵衛としてはなんとなく嬉しい。

 旅の人というにはやや長く、島の人というにはまだ短い時間しか流れていない著者が、さらに時を重ねてどんな言葉を紡ぐのか楽しみである。

2016年2月 7日 (日)

西加奈子『ふくわらい』完走じゃなくて感想

 西加奈子さんの『ふくわらい』を読んだ。「さんまのまんま」にゲスト出演しているのを見Photo
て、テヘラン生まれの大阪人というユニークな生い立ちに興味をひかれたからだ。

 想像以上に面白かった。福笑いにまつわる主人公の生い立ちを語る冒頭からから物語にひきこまれた。読書にも体力がいるのか、最近は面白い本でも読了するのに時間がかかるようになってきていたのだが、今回は一気に読み終えた。

 明石家さんまが、作者に笑いがわかっていると言っていたが、まさにそのとおり。読書中何度わらったことか。特に会話の部分はへたな漫才より面白かった。

 この小説の主題をまとめることなど私にはできないが、私なりに思ったのは・・・主人公が他者とつながってゆく、世界と親和していく物語ではないかということ。誰でも、周囲(親のようなごく近しい存在も含む)との違和感を感じることは多かれ少なかれあるはずだ。そしていろいろなかたちでつながりながら、アイデンティティを確立してゆくのだろう。…そんな物語に思えた。まとはずれかもしれないが、サリンジャーの小説をなんとなく思い出した。

 福笑いのことを考えたのも子どもの時以来で懐かしかった。あえて言えば、主人公のパーソナリティや会話はとても面白いのだが、なんかどこかで見たような・・・ありきたりといえばありきたり。もちろん、とっても面白いありきたりである。極論すればすべての文学は模倣から逃れられないのだろうから、それでこの小説を非難するのは不当だろう。

 とにかく西加奈子さんの他の作品も読んでみようと思ったことには間違いない。 

2015年12月17日 (木)

『水曜の朝、午前三時』に起きていたことがあるか?

 蓮見圭一さんの『水曜の朝、午前三時』を読んだ。「こんな恋愛小説を待ち焦がれたいた。わたしは、飛行機の中で涙がとまらくなった・・・・・・」という児玉清さんの帯の文句に惹かれて、ブックオフで100円で購入。

 涙までは出なかったが、けっこう引き込まれて楽しく読んだ。背景に万博が出てきたのも懐かしかった。人生に「たられば」はつきものだろうが、これほどひきずって普通に生きていけるのだろうかと思った。いや、世の中にはいろいろな人生があるのだろう。

 一つ疑問に思ったのは、本人の語りの中の「直美」と、娘婿の「僕」が語る「直美」の印象が随分違ったことくらいか・・・・・・。前半から中盤までは、語りにぐいぐいとひきこまれ、短時間で読了した。

 題名は、サイモン&ガーファンクルの曲名によるらしい。ふと思ったのだが、徹夜が出来ないAB型の私は、これまでの人生で水曜の午前三時に起きていたことがあるかというと・・・多分ないという結論に達した。まあ、どうでもいいことだが。

2013年6月24日 (月)

『色彩を持たない・・・』感想

 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』をようやく読み終えた。買って安心してしまい、しばらくほっといたが、いざ読み始めると一気に読みとおした。

 冒頭の数十ページと、中盤から後半にかけて次々に友人を訪ねていく件は、夢中になって読んだ。しかし、ラストの1章は、あまりに主人公が取り乱しすぎだし、「悪魔」が出てくるのはちょっとついていけない。まあ、こちらの読解力、想像力が不足なんだろうが、どうも退屈だったり、違和感を覚えたりした。

 主題は、世界との違和感と、その克服、繋がりの回復・・・みたいなもんなんだろう。それを、突然親友たちから絶縁されたその理由は・・・というミステリーチックな筋立てで描いた意欲作といったところ。周囲や現実との違和感は誰だって多かれ少なかれ抱いているもの。だから誰でも主人公に感情移入はしやすい。内省的な人は特に安心して浸れるんだろうな。普通はメソメソしてるとからかわれそうな悩みを、びっくりするくらい村上春樹が高尚にしたてあげてくれているのだから。

 でも、同じストーリーで直木賞作家の誰かに書かせ方が、飛びきり面白いエンターテイメントが生まれたかもしれない。 

 ところで、疑問が二つ。

 ①なぜ名古屋出身の登場人物たちが名古屋弁でないのか?まあ、村上作品の登場人物が「みゃあ、みゃあ」言っても絵にならないか・・・。

 ②村上春樹の文体は、モノローグとしてはとても良いと思うが、会話の部分(特に男女の会話)はどうも嘘っぽくていけない。方言を話す者としては、かっこよすぎて、こげんふうにしゃべる男女って本当におると?って思ってしまう。うーん、東京の人には違和感ないのですかね? 

 まあ、面白かった部分もあり、期待外れの部分もあり、私的には60~70点といったところでした。

 

 

 

 

2013年4月20日 (土)

ハルキストもどき

Dscn1958 話題の村上春樹の新刊を昨日購入。発売日に何軒か本屋をまわっても売り切れで、しばらく手に入らないかと思っていたら・・・1週間目にして買えて、ちょっと拍子抜け。

 熱心なハルキストとは言えないが、若いころはけっこうハマっていた。その後、どんどん大物作家になっていったので、天の邪鬼な私は、だんだん追いかけなくなった。でも、『1Q94』は、久しぶりにつ買ってしまった。で、今回も、作者はともかく、マスコミに踊らされてるなあと思いつつ、買ってしまった。まあ、いいか。

 で、かんじんの『色彩を・・・』であるが、買って安心したのか、まだ読んでない!(笑)やはり、私は「ハルキストもどき」らしい。コアなファンなら、徹夜で読むはず。しかし、旅行と一緒で、一番ときめくのは、本を手に入れて、読み始める時かもしれない。(『更級日記』の作者が『源氏物語』を入手したときのくだりが思いだされる!)1週間待たされた分、もったいぶって読んで楽しむことにしよう。